島根県糖尿病療養指導士第11期、第2回認定研修会及び第95回糖尿病を考える会研修会報告
日時:平成31年3月9日(土)~3月10日(日)
場所:益田赤十字病院
【研修講義内容】
【神経障害】
講師:たかせ内科 高瀬裕史先生
糖尿病神経障害の分類、診断基準、検査方法、治療法と療養指導について講義された。
病期のステージを患者と確認しながら信頼関係を築くことが重要である。
神経障害が進行すると、知覚が麻痺するようになるため、具体的に日常生活における注意点を患者に伝えると共に、フットケアの重要性についても繰り返し伝える。本人のみならず、家族ケアも大切である。
【糖尿病網膜症】
講師:たかせ内科 高瀬裕史先生
糖尿病網膜症の病期分類、治療方法について講義された。
日本糖尿病眼学会より作成・発行されている『糖尿病眼手帳』の紹介、第2版から第3版に改訂後の主な改訂内容についても伝えられた。
単純網膜症の病期は自覚症状が出ないことが多い。
自覚症状が出現したときには重症化しており失明のリスクも高くなる。
早期発見・早期治療のため、定期的な眼底検査を勧める。
生活の不都合など、現実味のある話をして受診に繋げることも手である。
【糖尿病とがん】
講師:たかせ内科 高瀬裕史先生
糖尿病によるがん発生促進のメカニズム、糖尿病とがんに共通する危険因子について講義された。
糖尿病患者の中には血液検査を受けていることでがんのリスクは少ないと思い込まれていることがある。
がん検診を受けているか、医療者側から確認することが重要である。
NASH肝がんの特徴、NASH肝がんのスクリーニングについても講義された。
【運動療法】
講師:藍野大学 医療保健学部理学療法学科 助教 本田寛人先生
運動療法の効果、運動開始前の検査・メディカルチェック、推奨される運動種類、心拍数による運動強度設定、目標歩数、運動指導上の注意点について講義された。高強度の運動は血糖値を上げることがあること、運動中止基準、合併症をもつ患者への指導上の注意点についても述べられた。
『三日坊主でも良い。「運動した」「運動できた」という事実が大切。』NEATの概念にもふれながら講義された。
【食事療法】
帝塚山学院大学学長 津田謹輔先生
食品交換表の歴史やBMIパラドックス等今後の課題、高齢者のフレイル等PEM対策としてタンパク質摂取量と筋肉量の関係にもふれ、年齢別栄養管理に関する考え方の『ギアチェンジ』について講義された。健康長寿の実現のため、一人ひとり異なる健康状態や特徴を把握して、個別の対応が必要である、とまとめられた。
【腎症】
講師:山根病院 山根雄幸先生
腎臓のしくみ、糖尿病腎症の病期、自覚症状、病期ごとの治療・療養指導における留意点、透析導入基準について講義された。
異常な進展がある場合、糖尿病腎症以外の腎臓病との鑑別診断が必要である。
【動脈硬化】
講師:山根病院 山根雄幸先生
動脈硬化の発症機序、大血管症の診断とアセスメント、PADの病期分類、糖尿病大血管症の治療と療養指導について講義された。
脂質異常症に関しては、日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017の改訂ポイントにもふれて講義された。
【高齢者糖尿病】
講師:松江赤十字病院 垣羽寿昭先生
血糖コントロール目標、高齢者糖尿病患者の特徴、急性合併症、慢性合併症、高齢糖尿病患者がフレイルとなる主な要因、糖尿病の認知症発症メカニズム、高齢者糖尿病の治療における留意点について講義された。
日本老年医学会から出された、『認知・生活機能質問票:DASC-8』や『高齢者総合的機能評価:CGA』にもふれ、保健・医療・福祉の連携による社会的支援が必要であること、目の前の高齢糖尿病患者のゴールは何か、常に自問しながら関わることの重要性について講義された。
【小児思春期糖尿病】
講師:並河内科クリニック 並河 整先生
小児思春期糖尿病の検査、発症頻度、1型と2型の管理・考え方の共通点と相違点について、患児・家族支援についてもふれ、成長・発育を見守り長期的にフォローすることの重要性について講義された。
【妊娠糖尿病】
講師:並河内科クリニック 並河 整先生
妊娠時の糖代謝異常の分類、診断基準、母体高血糖の胎児への影響、管理目標、合併症の母体・児への影響、計画妊娠、出産後の母子へのフォローおよび児の長期予後について講義された。
《実習》【調理実習に向けて献立作成と材料発注】
講師:松江赤十字病院 栄養課 安原みずほ先生
食事療法の意義、栄養バランスと食事の摂り方、食品交換法の食品分類、単位配分、献立のたて方について講義され、8グループに分かれてテーマに沿った献立作成を実習した。
作成者:第10期島根県糖尿病療養指導士チーム雲南・大田・邑智